猫とシュークリーム

タイトルは筋肉少女帯の「カーネーション・リインカーネーション」から。

雪の朝は憂鬱で

家鳴りで目が覚めた。ミシッ、バキッという乾いた音が頭上でする。ブラインドの隙間から差し込む白けた明るさに、「もう朝か」とソファから身を起こすと肩の関節がパキ、と音を立てた。家も身体もパキパキとやかましい。

いつもと違う妙な明るさにブラインドをめくると、そこには一面の雪景色が広がっていた。夜の間に随分と雪が降ったようで、車の上には10cm近くも積もっている。家鳴りの原因は気温の低下と雪の重みだったらしい。

雪の白さは寝起きの目を焼いた。雪を喜べる無邪気な頃はとうに過ぎていて、明朝まで続くという雪の予報に「月曜は仕事に行けるのか」という気がかりが一番に頭をよぎる。ここ九州の南端は雪に弱く、すぐに交通が麻痺してしまうのだ。

静まり返った白い世界に、しんしんと降り続ける雪の音がやけにうるさく感じる。
さっきまで傍で眠っていたはずの猫はどこかへ行ってしまった。
土とコンクリートをすっかり覆ってしまった雪を眺めていると、無力感がじわりと思考を占領して、何もしたくなくなってしまい再びソファに倒れ込む。

雪は嫌いだ。半端に凍った地面に足を滑らせた14歳の朝から。

何もない誰もいない朝。

こんな寒い日に遠くへいってしまった人。思い出すあの顔も14歳だ。

 

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