猫とシュークリーム

タイトルは筋肉少女帯の「カーネーション・リインカーネーション」から。

君はバルビレッジをしっているか

かつて、バルビレッジというブラウザゲームがあった。今、無性にあれをやりたい。

厳格な家庭に育ち、ゲームや漫画に縁のない子ども時代を送っていた。なので、飲みの席などで同年代のメンバーがゲームの話題を始めた時、ぽつねんと取り残されて大人しく枝豆むきマシーンとなるのが常だ。しかし、「テレビもゲームも漫画も禁じられていて、中学生になってこっそり買い集めていた『るろうに剣心』を見つけた母がブチ切れて2階の窓から庭に本を投げ捨て、それを泣きながら拾った」なんていう思い出を話すと、これが意外にも面白がられて盛り上がるのだから、こんな少数派の身の上も悪くはないかもなんて思ったりもする。

話は戻って、ビルバレッジだ。いや、バルビレッジだ。
そんな私が大学1年の時、ネットで知り合った友達に誘われて始めたゲームがバルビレッジだった。コマンドもなにも必要ない、クリックひとつで動作が事足りるシンプルなゲーム。“オウルベア”という、クマとフクロウがブレンドされたようなかわいいキャラクターのアバターを動かして、家や庭を作ったり、友達と交流するものだった。ゲーム初心者な私にはちょうどいい手軽さで、夜通し遊んだ記憶がある。

そのころはネット上で不特定の人と関わりを持つことに対してあまり警戒心もなかったので、そのゲーム内での知人も10人くらいできて、気軽にチャットをしたりしていた。スマホもない時代で、ネットを介しての犯罪だとかがそんなに頻発していなかったし、なにしろ若かったので遊ぶのがただ楽しかったのだろう。今はネット上でさえひきこもりな体質になってしまったけれど。

バルビレッジは半年くらい遊んだだろうか。いつのまにかログイン頻度が落ちて、仲間もだんだん姿を消し、村の隣家は荒れていった(バルビでは村に落ちている家具やグッズを好きなように拾っていいため、自分の家のブロックが持ち去られたりすることもあった。悲しみ…)。そんなこんなでバルビ歴は1年もなかったのだけれど、今になって無性に懐かしくなってたまらなくなっている。

調べてみたら、もう随分昔にサービスを終了しているんだな。2012年に終了だって。
初めて夢中になったゲームということや、今はどこで何をしているのか分からないバルビの仲間たち、そして自由そのものだった大学1年という日々。バルビレッジは、そんな何もかもが新鮮で、手放しで楽しかったころの思い出の象徴なのかもしれない。戻らぬ日々よもう一度……そんなセンチメンタルで、かつ現実逃避したい思いから、今またバルビレッジを求めてしまうのだ。

ここまで書きながら記憶を辿ってみると、ゲーム内を散歩していると不意に現れる別のオウルベアの気配に慌ててワープ機能を使って逃げてたりと、やっぱり10年前も人見知りでひきこもり気質だったことを思い出してしまった。
思い出は、やっぱりちょっと美化されている。